一畳ちょっとの二人部屋

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創作や趣味のゲームの話

【クトゥルフ神話TRPG】シナリオ『しほぢのまぼろし』ができるまで【RPG Writer Workshop】

 

  ちゃんとホラーシナリオなんです。本当なんです。

 

 前の記事を書いたついでにワークショップで作ったシナリオ『しほぢのまぼろし』ができるまでの過程を(覚えてる範囲で)丸々公開しようと思います。下書きも残ってる部分は全部載せます。他人がシナリオを作る過程に興味のある人がいれば読んでってください。

表紙&本文はこんな感じ。
 

しほぢのまぼろし表紙

しほぢのまぼろし本文サンプル

 下書きから直接本文になった箇所もあるので下書きとして残っているのはかなり途切れ途切れですが、初期構想からの変遷が分かるので自分で見てもちょっと面白いです。アイデア発展の過程からシナリオ本文以外の作業についても書きました。
 
 完成品のシナリオDLはこちらから(無料~好きな値段でDLできます)。
 DriveThruの使い方はTwitterで書いてくださってる方がいるのでこちらの方のツリーを参照してください。

 

  以下の部分でシナリオ『しほぢのまぼろし』のネタバレをしています。これからプレイヤー予定のある方は読まないでください。
  • ネタ出し、アイデア発展のきっかけ、リサーチ
  • 下書き
  • イデアの変化
  • シナリオ本文執筆
  • テストプレイと調整
  • 編集
  • レイアウト
  • 画像制作
  • 公開後

 

【クトゥルフ神話TRPG】CoC公式提携のシナリオ講座に参加してみた【RPG Writer Workshop】

ミスカトニック・リポジトリのトップ画像

RPG writer's workshop(Call of Cthulhu path)に参加しました

 

 ケイオシアムがStory telling Collectiveなるところと提携してCoCのシナリオを書いてみよう!の講座をやるよ!って話があったんですよね。
 

 

 しかも7版ルルブ共著者のポール・フリッカーがコースデザインしたって(参加してみたら普通に講師として記事書いてました)。
 
 いや行ってみるしかないじゃん。
 
 というわけで一か月+αのコースに参加してシナリオ書いてMiskatonic Repositoryで出すところまでやってみたのでその備忘録です。講座の具体的な内容からいきなり読みたい方は各日の講座概要メモからどうぞ。
 
 ちなみに完成したシナリオはこちら。

 

総括

 一か月でシナリオ一本(英語だと3,500wordsが目標とあったので日本語だと一万字ちょいくらいのボリューム?)を書き上げてDriveThruで販売するところまでやってみようというコースです。初めてのシナリオ出版をしてみよう!という表題でしたが、かなり広いレベルの人が役立てられる講座になっていると思いました。
 
 一か月で一本出版、という具体的な目標を掲げているだけあって、ステップバイステップで毎日少しずつやるべきアクティビティと講座が公開されます。使うリソースから手順まで全て具体的に書いてあるので、途中でやめさえしなければかなり機械的にシナリオが完成する仕様(シナリオのテンプレがあって埋めていくだけとかそういう仕様ではないです。どこまでサポートされているのかについては記事の続きにて)。機械的というと言葉が悪いかもしれないですが、システム化できるところはシステム化して労力を省き、脳のリソースを最大限創造性に割り振ってシナリオを作ることができるという点で非常に執筆の助けになる方法を学ぶことができました。
 
 シナリオを書くのって、文章を書く作業だけじゃなくてデータ作り、ハンドアウト作り、テストプレイ、デザイン、編集、広報(出版する場合)などなど無数の副次的作業がついてくるんですよね。そのあたりも丁寧に網羅されているところが出版までのバックアップとして強力でした。
 またシナリオを書く作業そのものにもアイデア出しからリサーチ、構造やギミックを考え描写の充実、推敲、などなどいくつかのステップがありますが、これらの具体的な方法論もすべて講座になっています。詰まった時には講座を見直してみる→その通りに手を動かすと詰まっていたところが自然と進む、ということが何度もあり、非常にうまい作りになっていると思いました(なんなら「シナリオ書くのに詰まったらどうするか」という直球の講座もあります)。
 詰まった時に必要なのって寝るか手を動かすかのどちらかしかないんですが、締め切りがあって寝ていられない、いつも寝てて仕上がらないからとにかく仕上げたい!という場合だと手を動かすしかないんですよね。で、手を動かそうにも何をどう動かしたらいいのか……という時の具体的な指針を与えてくれるわけです。とにかくAをやってBをしてみろと。
 机上の空論というか、抽象論からできる限り実技と言えるレベルにまで噛み砕いたコースだったなあというのが総合的な印象で、本当に得るところは多かったです。おすすめ
 
 形式としては全て英語、一日に一~数講座ぶんの記事が公開されるのを読んでその日のアクティビティ(宿題的なやつ)を仕上げていく方式。バッファとして何もない日もあります。
 Discordに参加すると講座の各ステージに合わせて細かく分かれたチャンネルが用意されていて、他の参加者と相談することも可能。メンター的な人がコメントしてることもありました。私はほぼ見てるだけでしたがCoCチャンネルで*1話した人から他国のCoC事情を聞けたりすることもあって面白かったです。時間食うので後半は封印してましたが。
 
 講座の目標として7月末に締め切りを設けて出版することが推奨されていましたが強制とか守れなかったらペナルティーとかそういうのは一切ないです。講座は期間が終わってからも見ることができます。なので単に参加してだらっと眺めるだけでも全然大丈夫なのですが、先に書いた通り実践的であるところに強みがある講座だったので参加するなら合わせて実際にシナリオを書いていくのが一番実りがあるんじゃないかと思います。
 

参加前のレベル

 良かったとは言っても筆者が元々どのくらい書いてるのか分からないことには参考にしにくいと思うので書いておきます。
 きちんと文章の形にしてまとめたことのある自作シナリオは一本あたりオフセ1時間~10時間程度のボリュームのものを40作ほど。どれも自分で回すかほしいという人に個人的に渡す程度で公開したことは一度もないです(そもそもまとまった文章にすらなってないアドリブとかメモ書きで終わるようなやつのほうが多い)。
 ネタさえまとまれば最低でも一日3000字くらいは安定して書けますが、まとまるまでの時間が30分だったり3年かかったりとまったく安定しません。「一日で一本完成させる」と決めれば休日一日でネタ出しから始めて~一万字程度のものを書けるくらい(テストプレイしてめちゃくちゃ直す前提)。
 というわけで、自分が回すという前提であれば一応書いて完成まではもっていける、が他人に見せるものを書くことはほぼない。他人に見せるつもりで直すとものすごい時間がかかる。あと締め切りを設けて書いたこともない。という感じだったと思ってください。
 

目標

 今まで全て我流でやってきたので、シナリオ執筆のための系統だった方法論を学び、自分の執筆スタイルに取り入れる。ネタ出し(というか自分の場合は散らかったネタをシナリオに使えるかたちで有機的に統合する方法)など安定しない部分をシステム化してある程度一定したペースで進められるようになればベター。
 最初から最後までできる限りワークショップの方法論に従い、一定のレベルを満たすシナリオを書く。せっかくなのでミスカトニックリポジトリ(有償でCoCのシナリオ販売するための公式のライセンスです)から一本出してドライブスルーで販売する、というのを目指していました。
 

結果

 8/7日に完成稿アップロード。私生活とかPCの問題とかで後半かなり触れない期間があったのが遅れの原因ですが何はともあれ完成しました
 当初の目標である散らかったネタを(期間内に)まとめる方法を学ぶ、というのは多分やりとげました。というのも、別に直接的に講座から学んだわけではないんですが、講座のスケジュールに合わせてはい次これ、次これ、とやっていくとどの工程もばしっと切り上げるために「今回はここからここまでの範囲の中で書こう」と決めてやらざるをえないので、先に枠を決めてしまうというのがなんだかんだ唯一の方法だなと……まあ薄々分かっちゃいたんですが諦念を得たというか。
 執筆のステージごとにどういう単位で区切っていくとやりやすいかという点は講座によって明確になったのでそこは大きい収穫でした。
 
 今回はインスピレーションがまとまるのを待つといういつものやり方ではなく、手を動かし自分で自分のペースを制御して完成までもっていくことができたので、運を天に任せなくてもシナリオを書くことができた(しかも人生初ちゃんと他人に公開するところまでいけた)という達成感が大きいです。すごーーく楽しかった。私生活落ち着いたらまた次書きます(というか書く分にはいつも書いてるんだけど、また書いたの公開します)。
 
 ついでに新しい課題も見えました。一番は他人に読ませるシナリオ文章を書くのは本当に骨が折れるということ。こういう気楽なブログ記事や小説だと気にしないのですが、ここはそれぞれの卓の求めるバランスやPLの提案に応じて各々自由にやってほしい……という箇所の処理についてどこまで書くかとか、細かい背景事情をどこまで書くかとか(正直よく分からんとこあったら捏造してもらっていいです、どのシナリオでも言えることですがその卓の中で辻褄が合えばいいので)シナリオという特殊な形式ならではの悩みがありました。自分で回すなら回すときにいい感じにアドリブすればいいんですけどね、他人に渡すとなるとね。あと校正を他人に頼めなかったので次からはちょっと考えたいです。
 

 

講座の各日概要メモ

 というわけでここから実際に講座でどういうことをやっていたのか日記代わりのメモから概要の分かる部分を抜粋していきます。
 

2-3日目 準備編

(※1日目に公開されたアクティビティの締め切りが2日目なので2日目から記録が始まっています)
 具体的な目標の設定、使うツールの調査と決定、講座の進行をふまえた予定表とToDoリストの構築、ありうる障害を最初に予測して心構えをしておく……などなど、準備段階ですがかなり細かくやることがありました。どれも普段はなんとなくでやらない場合がほとんどですが、締め切りある場合はちゃんとやるとやらないで全然違ってきますよこれ。本当に(と後で実感)。
 

4日目 アイデア出し&ムードボード

 ブレインストーミングでより多くのアイデアを出す重要性と具体的なネタ出しの方法について。最近ネタ出しに使ってる方法だとさっぱり思いつかなかったのでレッスンにあった方法を素直に試しました。データブック(ルルブのデータパートやマレモンなど)はすぐにアイデア出るけど安直かなあとかいう謎の思考から最近避けてたけどアイデアの数を打つ時はやっぱりこれですね。他にも色々あったのでそれぞれに合う方法が見つけられるんじゃないかと思います。
 
ミニ講座
 ムードボードやシナリオをイメージした音楽のプレイリストなどを作ってみよう!という講座。モチベ維持のために意外と大事なんだよ~という真面目な話をしていました。シナリオやPCのテーマソング設定する人はけっこういる気がするけどムードボードはあんまり見ないよね(著作権の関係で他人には見せてないだけかもしれないですが)。
 

5日目 Living Document

 Living Documentを作る。この語はちょっと相当する日本語を思いつかないんですが、しいて言うならキーパー情報とかデータとか全てひっくるめたシナリオ本文。あえて訳すなら「随時更新文書」とかになるのかもしれないですが、要は本番のシナリオを書いていくための文書ファイルを作ろうということ。
 真っ白なところから書き出そうとして手が止まるのを防ぐためにシナリオ本文のフォーマットを整備しようという感じでした。
 

6-7日目 アクセシビリティ

 Accessibilityについて。視覚障害がある人のためにスクリーンリーダーを使って読み上げやすいPDFを作るだとか、色覚異常の人にも読みやすい版面を作ろうといった話題でした。最近ユニバーサルデザインの一環で色覚異常への配慮はけっこう耳にするようになってますがディスレクシアとかにまで言及があったのはさすがでした。スクリーンリーダーが使えると別の作業しつつ読み上げでシナリオを聞いて確認したいというような場合にも使えるので、きちんとやれば万人にとって嬉しいPDFが作れるというわけですね。画像の代替テキストの書き方などもありアクティビティでしっかり練習しました。
 

8日目 ミスカトニックリポジトリについて

 6日目まではD&Dコースと共通の内容だったのですがここからCoC固有の内容に分かれました(また後日共通の部分も入ってきます)。
 この日は単純にミスカトニックリポジトリのガイドライン読め、という話でした。いやなんかね、権利的に出していい神話生物とか結構細かく読んどかないとまずいところあるんですよねこれ……。Discordもこの話題ではかなり賑やかだったような気がします。私も完璧に読めてる自信ないのであかんかったらまた出直します。
 ちなみに規約関係の話だけではなく、レイアウトの配布テンプレを確認してみようとか(日本語版はリンクがなかったので無いと思い込んでましたが最終盤になってどうしてもテンプレ確認しないといけない箇所が出てきて発狂してた時に偶然発見)Miskatonic Repository Additional Guidelinesのほうに載ってる商用利用無料の素材のあるサイトを探検してDLしてみようとかD&D共通の講義にはなかった準備段階その2的な内容も。
 

9日目 CoCのアイデア

 3日目のブレインストーミングの項でアイデア出しについては一度やったわけですが、CoC固有のアイデアについての講座がもう一度。ここのアクティビティはもう少し自分で発展させればシナリオのアイデアを涵養するのにいいフォーマットを作れる気がします。
 

10日目 障害

 アドベンチャーデザインにおける障害の種類について。これは自分でもっと詳しく具体例から何から色々分類して並べてあるネタ帳があるので流し見してアクティビティを一応やった程度ですが、自分ってあんまり人間の障害を活用しないなぁと気づきました。対カルトのシナリオもそれなりにあるんですけど、CoCだとどうしても神話生物とか呪文とかいじくってるほうが面白くてね……。
 

11日目 シナリオの構造

 CoCシナリオの構造について。形式上の構造(シナリオの背景とか導入とかNPCリストとかこういう項目をこういうふうに作ってね~)からシナリオ自体の構造を作る時の注意点まで非常に有用な回でした。とくに形式上の構造についてはいちいち自分で既存の公式シナリオ見て真似てとやるよりリストアップしてくれてるのを見ながら書く方が断然楽だったので実にありがたい記事でした。他人に読ませるための機能的な文章書く時に大事なのってなんだかんだ形式だよね。論文とか。
 シナリオ自体(ストーリー?)の構造については、目新しい内容があるというよりなるほどポール・フリッカー氏はこういうところに気を付けてほしいんだなというのを読むことができて面白かったです。フローチャート作るほどの流れがシナリオになかった(当初)のでフローチャート作りはサボった。
 

13日目 リサーチ

 リサーチについて。リサーチの必要性とやり方についての簡単な総説だったのでとくに新しく学ぶことはないかな~などと思ってたんですが、読んでてなるほどな~と思うところもあったのでちょっと気合入れてやりました。
 

14日目 シナリオテキスト

 CoCのシナリオテキストについて。かなり充実したレッスンでした。
 シナリオ中に出てくるさまざまなテキストの種類とその書き方、考え方、CoCのシステムにのっとった簡単なスタイルガイドのようなものまで。シナリオテキストは技術文書であるという点は常々意識していかなければならない点だと思いました。
 

15日目 NPC

 NPCの作り方について。これも非常に気合の入った回だったんですが、NPCに強いキャラクター性があるのがあまり好きではなくて無味無臭にしがちな自分にはけっこうなチャレンジでした。今回は自分のやり方ではなくコースの方法論に忠実に従ってやるのが目標なので色々と考えてみることに。
 NPCがうっとおしいのはキャラクター性のあるなしとは無関係でPCの活躍や達成感を奪う立ち位置に出しゃばってくる場合だけだと分かっちゃいるんですが、どうしても書き割りの舞台装置になってしまうのでもう少し中庸でいきたいですね。
 

16日目 悪役

 敵(悪役)の作り方について。アドベンチャーデザインにおける障害のレッスンを一部引き継ぎさらに発展させた内容。効果的な悪役を作り上げるためにこういう項目を埋めてみようというような便利なフレームワークもあったので人間のヴィランが出てくるときはぜひ使ってみたいと思いました。
 悪役も要はNPCであって作りこむのが苦手、というかそもそも作りこむ必要性をあまり感じていなかった(あるいは無視していた)分野なのでこの課はまたあらためて取り組む必要がありそう。
 

17日目 ハンドアウト

 CoCのハンドアウトの作り方について。プレロールドキャラクターの事前配布設定という意味だけじゃないですよ。プレイヤー配布資料全般のことです。マップやイメージ画像なども含。
 この時点で必要なハンドアウトについてあまりイメージが固まってなかったのでアクティビティでごりごり書き出したのがかなり執筆を進める助けになりました。
 

18日目 スランプの抜け出し方

 CoCの執筆に行き詰まった時の抜け出し方について。これでもかというくらいスランプ脱出のための方法が書かれていて正直ものすごく役に立ちました。
 自分がやっているのはリサーチ用の資料を余計に読む、他人のシナリオを読む、人に相談する、断片的な単語でもいいので思いついたことを片っ端から書く、くらいでしたが他にも色々とやり方があるものだなぁと。この日のレッスンのおかげでさらに執筆が進んだし新しいイベントも生えました。
 

21日目 描写

 雰囲気づくりのための描写の重要性とどんな描写を書くべきかということについて。機能的文章としての観点からシナリオに必要な描写について解説がありました。
 あまり長い詩や小説のような文章だととくにオフセで読み上げるにはちょっとう~んだし、無いと味気ない。簡潔だけど効果的な描写が必要なんですよね。どのような観点から文章を磨くべきなのかということについてあらためて考えさせられたレッスンでした。
 

22日目 テストプレイ

 テストプレイについて。テストプレイのやり方、フィードバックの受け方などについて基本的なところからしっかりとした解説がありました。テストプレイ中の進行については自分もやり方がふわふわしていた部分があったのでアドバイスを取り入れてみました。
 

23日目 編集

 編集作業について。編集者の仕事についてかなり詳しい説明があり、個人出版であってもフリーランスの編集者などを雇うことが勧められていました。外注作業にかかるセクションがあると思ってなかったので驚きましたね。料金の目安や編集者との協働の仕方など(英語圏向けですが)具体的に載ってて興味深く読みました。
 自前で校正する場合についてもちゃんと書いてありましたが、いずれにせよクオリティのために本文を書く以外の作業にもしっかり力を注ぐというスタンスのようです。
 

24日目 表紙デザイン

 表紙のデザインについて。一記事だけなのでさすがに最低限でしたが各種リソースの紹介、色やフォントの扱いについて解説あり。どの日の講義もそうでしたが、何故この項目をコースの中でとりあげる必要があったのか、それに時間を割くのがいかに重要かということが非常に丁寧に書かれていてどれも気を引き締めてかかろうという気分にさせてくれるのが地味にいいところだと思いました。
 別の記事で外部のかなり詳しいサイトが紹介されていたりしたので(長すぎてまだ全部読めてないくらい)、そういった追加のリソースで十分すぎるくらい補完できたと思います。
 

25日目 ページレイアウト

 ページレイアウトについて。表紙デザインと比べてかなり具体的な内容がありました。追加の講座にもレイアウトに的を絞ったものがあったので基本的な内容はほぼ網羅されていたのではないかと思います。
 DLしてそのまま使えるテンプレートなんかもあり。
 

26日目 マーケティング

 マーケティングについて。これも編集のように色々な種類のマーケティングについてきちんとした説明と基本の方法論があり、一言で言うとちゃんと戦略的に宣伝しろ!!っていう内容でした。ブログとか書くのもいいらしいので自分はとりあえずこの記事から。次の3か月間にわたってちゃんと宣伝しろって言うアクティビティなんですよ。3か月……?
 

27日目 クリエイターのコミュニティに参加する

 前半はゲームにおける心理的安全性を確保することについて。トラウマティックな内容についての警告(content warnings)やプレイ中に使うセーフティーツールについてですね。そのうち記事書こうと思って2年くらい放置してるな。
 後半はチーム制作(というか仕事としてのシナリオ制作)に参加したい人に向けての詳しいガイドなど。これから本格的にシナリオライティングの業界に入っていきたい人に向けての案内という感じでした。英語圏のコミュニティ向けですが基本的には万人に通じる内容なんじゃなかろうか。こういうのがちゃんとテキスト化されてるあたり業界を作る、コミュニティを作るという業界全体のはっきりした意識が見られていいですね。
 

31日目 まとめ

 まとめとして最後に各種プラットフォームでの出版の方法が案内されて終わり。有償シナリオにした場合はワークショップのバンドルに入れて色々広告してもらえるということで有償にすることが勧められてたんですが日本語シナリオほぼない環境で英語のバンドルに入れてもな……ということで今回はPay What You Want(買い手が任意で値段設定可、無料もOK)にしました。
 レッスン本体に加えてペップトークなどの追加コンテンツが公開される日もありましたが本筋には関係ないので割愛。あとRPG Writer Workshopの参加者に自動的に公開されるリソース集もあり、これが普通に一講座になりそうなくらいの文量がありました。ワークショップの各工程で扱った内容(ストーリーデザイン、マップデザイン、世界観デザイン、ゲームメカニクス、アイデア出し、アクセシビリティ、レイアウト、等等……)についての外部リソースが案内されていてより深く知りたい人向けに講座の内容を補完してくれるというわけ(D&D向けが多いですがCoCにも応用できるものはあります)。とてもじゃないですがすぐに全部見られるような量ではないのでこれからまたゆっくり勉強していこうと思います。
 

 おわりに&成果物について

 というわけで、長い記事でしたがお付き合いありがとうございました。
 それでこの講座を経て一体どういうシナリオができたんだ?と気になる方はよかったらDLしてってください。Pay What You Wantなので無料DLも全然OK、もしこの記事が面白かったら投げ銭代わりにでもいくらか値段設定してくださると喜びます。
 

www.drivethrurpg.com

 新規継続不問の短時間シナリオってやつなのでお気軽にどうぞ。

 

 DriveThruの使い方についてはTwitterで解説されてる方がいるのでこちらを参考にすれば登録→DLまでいけます。

 

 

*1:D&Dのコースもあってどちらかというとそっちの参加者がメイン

【小説】スティーヴン・キングのクトゥルフ神話的世界を探検する【映画】

……わたしが鉄てこでやっつけたように、やつらはラヴクラフトの小説に出てくる不死の生命を有する怪物などではけっしてなく、……
……凶運の都、古代の悪、発音もわからないような名前をもつモンスターたちといったラヴクラフト的な世界へさまよいこんだという彼の印象も、……
……だがこれが物語だとしても、ラヴクラフトブラッドベリやポーが書いた古典的な恐怖小説ではない。……
 
 このラヴクラフト大好きな小説家は一体誰だ?と思われた方もいるだろう。タイトルにもある通り彼の名はスティーヴン・キング、現代アメリカを代表するエンターテイメント作家の一人だ。
 
 『スタンド・バイ・ミー』や『ショーシャンクの空に』といった名作映画の原作者として知る人も多いと思うが、なんといっても彼の十八番はホラー。しかも、その多くにクトゥルフ神話要素が取り入れられている(あるいは、ラヴクラフトの影響が色濃い作品スタイルになっている)のである。
 「読み方によってはクトゥルフっぽい」とかではなく、上記引用のように非常に意識的な言及がある*1。また言及こそないものの明らかにラヴクラフト・スタイルを踏襲した作品も複数見られ、影響の大きさが伺える。
 
 クトゥルフ神話TRPGサプリメントマレウス・モンストロルム』には彼自身の作品から収録された神話生物もいる(これについては作品紹介で後述)ほどで、彼自身CoCというゲームの世界観にも影響力のある存在であることは間違いない。
 
 今回はそんなキングの著作から、読みやすく、神話的雰囲気を楽しめるいくつかの短編・中編を紹介する。
 ルールブックでおすすめされたラヴクラフト作品をある程度読んでみたが、他の作家の作品はないだろうか?あるいは、ラヴクラフトはちょっとお堅いかんじがして途中で手が止まってしまう。そんなあなたに特におすすめしたい。

 

 まずは短いものからいこう。

短篇

『N』

悪意に満ちた神々!
 とある神経症患者の記録から始まる、密やかにして奇妙な「世界を守る闘い」の物語。
 患者のテープの書き起こし、精神科医の手記、その他登場人物の手紙などから徐々に明らかになるこの世の綻びと、それに巻き込まれていく人々の狂気がつづられる。
 
 規模から言えば一度にメインをはる登場人物はせいぜい一人で、舞台もほんのささやかな空き地や病院の一部屋なのだが、その「世界の片隅」に茫漠とした宇宙的恐怖を描き出してみせる手腕は見事の一言
 
 CoCのシナリオを書く人にとっても登場人物の手記や手紙、正気を失いつつある人間の描写など、参考になる記述が盛り沢山の一作だ。

 
 

『トウモロコシ畑の子供たち』

「畝の後ろを歩く人、か」と、バートはイグニッションを切りながら呟いた。「たぶん、ネブラスカだけで使われている九千通りもある神の名前の一つだな。
 この『畝の後ろを~』という名前に見覚えのある方もいるだろう。マレウス・モンストロルムにも収録された*2、とある神格の化身である*3
 
 とある夫婦が旅の途上に訪れた、合衆国で『いちばん素敵な小さな町』、ガトリン──その町と、町を取り囲むトウモロコシ畑には邪悪な秘密があった。
 
 トウモロコシというのどかなモチーフを題材に神話的ホラーを描き出すことで、ある種のセンスオブワンダーすら与えてくれる珠玉の作品。
 主人公のちょっとした調査によって町の異様さがあらわになっていく様子や恐怖の源に追われる終盤の緊張感は、シナリオとしてもそのまま使えそうなほどの完成度がある。
 
 この『ナイトシフト〈2〉トウモロコシ畑の子供たち』には他にもちょっとしたクトゥルフ神話要素を覗かせる作品が収録されており、イチオシの短篇集といえる。

 

 ↑一応映画もあるが、円盤は高騰しているようなのでレンタルなどで探すほうが無難そう。
 

中篇

『霧』

「疑うものは最後まで疑うがいい! …(中略)… 霧のなかの怪物! 悪夢から出てきたいまわしいもの! 目のない異形のもの! 蒼ざめた恐ろしいもの! 嘘だと思うの? だったら外へ行ってごらん! 出て行って、挨拶でもしてくるがいい!」

 「後味の悪い映画」としてちょっとした知名度を誇る『ミスト(2007)』の原作中篇。映画版とは若干展開に違いがあるため、既に観たことのある人も新たな気持ちで読んでみてほしい(ただ本当に誤差程度やんけ!!と思う人もそれなりにいると思う。その場合は何卒ご容赦)。
 
 ある日突然霧に覆われてしまった町で、幼い息子を抱えてスーパーにたてこもった主人公は襲いくる恐怖に立ち向かう。
 モンスターパニック要素の強い本作だが、敵の正体を徹底的に底知れない「何か」として描くことで、決まった呼び名のない未知の恐怖、まさしくクトゥルフ神話的な恐怖の方向性を打ち出すことに成功している。
 ちなみに作中で引き合いに出される『物体X(※映画『遊星からの物体X』に出てくるモンスター)』も実はマレウス・モンストロルムに掲載済。映画の冒頭では主人公の背後に映画ポスターが貼ってある。

 
 映画のモンスター造形も非常に秀逸で、紋切り型でない「モンスター」の怖さを楽しみたい向きには合わせて是非ともおすすめしたい(個人的にギレルモ・デル・トロ作品のモンスターが好きなのだが、同じ趣味の方にはとくに◎のはず)。実写化としても比較的原作に忠実・かつ原作を知らなくとも面白く観られる成功作品の部類だと思う。
 映画は各種動画配信サービスにて視聴可能。

 ↑現在(2021/6/21)はAmazon Prime Videoの見放題にラインナップ中。見放題から外れても定期的に戻ってくるのでウォッチリストに入れておけばそのうち観られるはず。
Netflixにもありました。
 
 

 
 以上に紹介した作品はどれも非常にオススメのためどれか一作読むなら……というのが難しいのだが、しいて言うなら『トウモロコシ畑の子供たち』をお勧めする。電子書籍で買えるものから選ぶのであれば『ミスト』(『N』も面白いのだが、かなりの短篇のため読み応えを考えるとこちらに軍配が上がる)。
 
 
 キングの小説は図書館に置いてあることも多く、手軽にアクセスしやすいクトゥルフ神話(的)小説作家の一人だ。今回は紹介できなかった長篇小説も含め、気になるものがあれば一度読んでみてはいかがだろうか。
 キングの長篇は基本的に長いのとスロースターター(かわりに話が走り出すと読む手が止まらない)のため誰にでもいきなりおすすめとはいかないのだが、クトゥルフ要素を求めて挑戦するのであれば冒頭にも引用した『IT』をどうぞ(ITは映画版の旧作も有名だが、ITの正体や最終決戦など肝心のところが削られている)。

 おなじみ森瀬先生。

 
 

*1:実のところ、このようにラヴクラフトに言及する場合は大抵「ラヴクラフト的『ではない』」というような言い方でラヴクラフト的恐怖からは離れようとしているかのようにも思えるのだが、作品全体を通して読むとはっきりとした影響が見えてくることが多い

*2:マレウス・モンストロルムに引用されているケヴィン・A・ロスの『Dark Harvest』とは、2002年にPagan Publishingから出版されたシナリオ集『Out of the Vault』収録のシナリオ。

*3:作中で直接その神格について言及されているわけではない

【クトゥルフ神話TRPG】ルールブックに載っていない武器の技能値を決める方法(6版)

 即席でそのあたりの日用品などを武器として使う際、何の技能で判定してもらえばいいの!?と悩んだことのあるKP向けの記事。
 
 ただ同じ武器、あるいは同じ名前の技能でもサプリによってデータが違うことがあるので、あくまで筆者が見たことのあるデータから導き出したおおざっぱな分類ということでご了承ください。
 最終的にはルールブックや採用しているサプリを元に、KP裁量で決めてしまって大丈夫です。
 
 これはKP向けの記事なので、PC作成にあたって特殊な武器技能をとりたいというPLさんは必ずKPに相談してください。
 

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①こぶしを使うもの

 基本的に、①刃がなく②手の中に握りこんで使えるサイズ(スタンガン*1程度まで)のものは<こぶし>を使っていることが多いです。
 石などの固いもの・重量のあるもので殴る場合は1程度の固定値がつきます(メリケンサックのような装着型の武器でも同様)。手に握れる程度のサイズである以上それよりダメージが増えることは稀なようです。
 
 手からはみ出るサイズ(だが棍棒というには短すぎる)となると<こぶし/小さな棍棒>のようにどちらで判定してもよい、という扱いになっていることもあり、その場合は1D◯の◯が<こぶし>の基本ダメージより多少大きかったりします。机上の大きい文鎮で殴るぜ!という場合などこれに当てはまるかもしれません。
 
 

棍棒を使うもの

 刃のない物体は①のように<こぶし>で使うもの、<投擲><鞭>のような特殊な使用法のものを除くと基本的には<大きい棍棒><小さい棍棒>を使用します。
 
 物体を振り回してその遠心力や重量で殴るようなものは大抵棍棒だと思ってよいでしょう。
 両手で使うサイズ/重量のものは<大きい棍棒>片手で使えるものは<小さい棍棒>という判定のことが多いです。
 
 あるいは<ブラックジャック>のように敵に当てるのが容易なものならば<ブラックジャック>と同様の初期値を使ってもよいでしょう。
 
 

③刀剣技能を使うもの

 刃があったり、物体を貫けるほど鋭いものは各種刀剣や槍、斧技能のうち近いものと同じ初期値を使います。
 武器の特性としては、
①サイズ及び重量はどの程度か?②片手で使うのか?両手で使うのか?③刺して使うのか?斬って使うのか?④柄や刃の形状は?
 あたりを考慮するとよいでしょう。
 
 ただ刃のある武器=刀剣、槍類とくくってしまうのもちょっと雑で、例えば1920IC掲載の鎌類は<大きい棍棒>になっています。
 形状としては斧に近そうですが斧のように重量で叩ききるという使い方ではありませんし、かといって刀剣や槍のような使い方でもない→とりあえず振り回して当たればOKなので棍棒、という感じなのかもしれません。
 武器は殺傷に至るメカニズムにかなりバリエーションがあるので、変わった武器が使われる可能性がある場合は事前に考えておく(か、悩んだら大雑把に汎用的な技能を使うことにする)とよいでしょう。
 

 

 

④投擲

 普段は手に持って使う物体であっても、投げて当てる場合の判定には<投擲>を使用します。
 
 

⑤鞭など

 単に手に持って使うのとは明確に違う技術を要求される武器がいくつかあり、鞭もそのひとつです。
 どうしても棍棒、刀剣といった上記の分類にはおさまりきらない、と思った場合は特殊な用法の武器ということで鞭と同程度の初期値を採用するとよいかもしれません(鞭の技能値についてはルールブックを参照)。
 
 

⑥電気修理、化学など

 爆発物など、自分の身体能力に依存しない攻撃手段で、なおかつ安全に扱うのに専門知識が必要な場合は各種専門知識で判定することになります。
 p.71などからも分かるようにこれは設置型の場合で、敵に投げつけたりするならば<投擲>等の判定を使うことになるでしょう。
 
 

⑦DEX

 ルールブックのp.70にもDEXを用いる武器が載っていますが、このように自分の身体能力に依存せず、電気や化学物質等を扱うほどの専門知識も必要ないがとにかくそれを『うまく扱えたかどうか』の判定が必要な場合の最終手段にはDEXを使います。
 
 あるいは貫通のある武器を板などに押し当て、力を加えて穴をあけられたか判定する、というような状況であれば、その武器自体を扱う技能は必要ありませんから筋力ということでSTRを使ったり、どれだけの体重をかけられたかということでSIZを使ったりするような状況もあるかもしれません。
 
 このように使い方次第で判定の変わるアイテムというのはちょくちょく存在しますが、自分が見たことのある中でも頻出かつ判定のバリエーションが多いように思うのは松明です。こぶし、DEX、棍棒(サイズに応じて大きいのも小さいのも)など。棍棒を使う場合は(火をつけにいくというより殴るので)火傷ダメージはなしとしたり、また火がつくかどうかを別途幸運で判定したりと様々な裁定があります。殴りたいのか、単に火が相手に燃え移ればよいのかなどPLの意図に応じて判定をアレンジする心構えが必要です。
 
 
 

具体的な武器・技能データの掲載されているサプリメント

 特徴的な時代や地域を扱ったサプリメントには技能や武器の追加データがちょぼちょぼ載っていることが多いのでこれ以外にも色々とあるのですが、追加の武器データなんかを見たい場合に基本的なサプリメントを紹介。
 

クトゥルフ2010, 2015

 武器のみならず技能、職業など現代日本向けのデータが全体的に充実したサプリです。詳しくはリンク先の商品説明やレビューを参照してください。
ただ、紹介記事などで言及されている『日用品の武器データ』は下で紹介する1920ICに同じものがある(というか多分こっちが元ネタ)のでそこが気になっている場合1920ICを買う方が圧倒的に安いです(このデータだけを目的に2010を買う人はあまりいないとは思いますが)。
 
 

1920IC(1920s Investigator's companion)

 その名の通り1920年アメリカを遊ぶためのサプリメントで、火器が中心ですが海上で使える武器や工具箱の中身を使う場合の技能やダメージなど様々な武器データが充実しています。

 内容や入手方法についての詳しい紹介記事はこちら↓

 

*1:目にしたことのある中で一番大きいのがスタンガン程度のサイズ感のものだったというだけで、どこかに明確な基準が記載されているわけではないです

【クトゥルフ神話TRPG】悪霊の家から考える良い初心者向けシナリオの条件

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 長らく基本ルールブックに収録され、初心者向けシナリオと言われれば必ず名前が挙がる『悪霊の家』。もしかするとなじみがありすぎて何がすごいのかよく分からないという方もいるかもしれませんが、実は初心者向けに必要な要素がよく作りこまれており、非常に完成度の高いシナリオなのです。
 初心者向けシナリオを選ぶとき、どんな要素に気をつけるとよいのか?『悪霊の家』を例にとって考察します。
 6版と7版ではシナリオの大筋はほぼ変わりませんので、基本的には6版ルールブック掲載分を参考にしつつ、必要があれば7版変更箇所にも触れる形で進めていきます。
 
※以下は初心者PL向けシナリオを探しているKP向けの記事です。シナリオ内容のネタバレがありますので、これからPLとして遊ぶ方は続きを読まないでください

無料&オンラインで見られる有名なイラスト技法書

著作権が切れてパブリック・ドメインとなった本や音楽がアップロードされ、自由に閲覧・ダウンロードできることで有名なInternet Archive。その中でも人気のある初心者向けのイラスト参考書をイラスト全般・人物画に分けて紹介(ほぼルーミス)。すべて題名のリンク先からpdfが無料でダウンロードできる
ルーミス本については全て日本語版が販売されているので、買う前に中身を確認するのにも使える(日本語版があるものは各項目の最後にAmazonリンクを付記)。

イラスト全般

Drawing made easy

本当のお絵描き初心者ならこの本は非常におすすめ。正式名称の『Drawing made easy : a helpful book for young artists; the way to begin and finish your sketches, clearly shown step by step』からも分かる通り子供向けの教本のようなのだが、人物から身の回りの静物、乗り物のような複雑な立体から風景画まで、徹底的に単純な幾何学図形に分解→細部を描き込んで完成、という簡潔かつシステマチックな手順であらゆるものを描く方法をステップバイステップで見せてくれる。

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こういうやつ。

 

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曲線が多く辻褄をあわせづらい自然物の形もこのとおり。

 

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動物はこのほか複雑な大型動物であるところの馬の描き方などもある。

 

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 比率でシンプルにとらえる顔の描き方。

 

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動きのあるポーズを単純化するとらえ方。

 

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 難しそうなプロペラ機もこのとおり。

 

 
 

初めてのイラスト教室

ルーミスその1。遠近法や明暗のデッサンについてかなり詳しい解説があり参考になるが、本当に初めての人が選ぶイラスト参考書ではないと思う。邦書の題名にやや疑問。

人物や物の形をなんとなくひととおり描けるようにはなったものの、影の付け方や遠近法を用いて画面の中に正しく配置する理屈がよく分からない……というくらいの人に非常に役立つ内容。

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 遠近法の解説。

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明暗のつけ方。

 
 

ルーミスのクリエイティブイラストレーション

イラスト指南としては前半に線を構図や描画に活用するための線セクション、トーンのセクション、色のセクションの3つがあり、後半には絵にストーリーを盛り込む方法、アイデアの出し方や広告などの商業イラストの作り方が掲載されている。

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構図。もっと真面目なコンポジションの話や商業作品のアイデアスケッチなどもある。

 

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トーン。

 

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色。自然な色の選び方や色の効果についての解説も。

 

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雑誌広告イラストのスケッチ。

 

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商業イラストのメイキング。

 
 

人物画

やさしい人物イラスト──どうすればうまく描けるか?

これもルーミス。表紙のような単純なコミックタッチの顔の描き方から始まり、だんだんステップアップして徐々に複雑な人間を描けるように練習する本。デッサンではなく線描が基本なのでシンプルなアニメやゲーム調のイラストを描きたい人には下のルーミス本よりこちらのほうが役に立つのでないかと思う。

 

 
 

やさしい顔と手の描き方

さらにルーミス。その名の通り老若男女様々な顔や手の描き方についてこれでもかという解説が詰まった本。とくに年齢別の描き分けの解説が非常に詳しい。

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左側が小学生の項の作例、右側がティーンエイジャーの項の扉。乳児─幼児─小学生─ティーンエイジャーと目まぐるしく顔が変化する時期の描き分けがすべて解説されているのがすごい。

 

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手についての基本的な解説。

 

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乳児の手。

 
 

やさしい人物画

『ルーミス本』といえばこれ、一番有名なやつ。

人体デッサンを基本の比率、パースに合わせたり角度をつけた描き方、骨格、筋肉、服のしわなど一通りの描き方についてレクチャーされている。模写周回する人も多い。ちなみに私にはシェパード本のほうが分かりやすかった。

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モデル化して描く人体のポーズ。

 

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遠近法に基づき角度をつける人体の描き方。

 

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筋肉の詳細な解説。

 

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ブロック化してとらえる人体モデル。

 

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頭、腕、脚など曲面的な立体のとらえかた。

 

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最近の参考書でもよく見る基本的な顔のバランスのとりかた。

 

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手指のとらえかた。もちろん足もある。

 

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服のデッサン。

 

【クトゥルフ神話TRPG】KPに必要なプレイ中の心構え

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 事前準備はすんだものの、肝心のセッション中はどんなことに気をつけながら進行すればよいのか?基本的な心構えについて書いていきます。

参加者に気を配ろう

 KPはセッション参加者の一員であり、同時に卓のホストともいえる存在です。他の参加者がいかに楽しく遊べるかはあなたの采配に大きく左右されます。KPの立場からどのような点に気を付けるべきかを挙げます。
 
 セッションが始まると、机の前で数時間釘付けにならざるをえません。適度に休憩をはさんだり、時間が伸びそうであれば以降の予定についてPLと相談しましょう。
 2,3時間程度であれば一気に走り抜けることも多いかもしれませんが、それ以上伸びるとどうしてもKPPL双方の注意力は低下してきます。「最後疲れてて思うようにできなかったな……」という未練を残さないためにも休憩の時間はあらかじめ計算にいれて時間をとりましょう。
 また事前の予定より後ろに押しそうな場合。1時間おきくらいのスパンでこまめに進行を確認しておき、もし予定どおり終わらなかったらどうするかは必ず他の参加者と相談しましょう。とくに「あと10分、いや15分オーバーくらいで終わりそうなんだけどな……」という時はそのまま突っ込んでしまいたくなるかもしれませんが、皆それぞれに次の予定があります。もし暇でも「○時にこれが終わるんだったらその後これして遊ぼうかな」などと個人的な予定を立てている場合もありますから、時間の延長・変更はささいなものでも必ず相談するようにしてください。
 
 次、特に初心者がいる場合の注意。探索でどういうふうに動いたらいいか分からない、ロールプレイのタイミングが掴めないなどでいわゆる「地蔵」になってしまう場合があります。そのシーンにいるのに全然発言できていない、というような人がいないか注意しておきましょう。喋れていない人がいる場合は、○○さんはどうしたいですか?と振ったり、NPCやイベントでロールプレイのできるようなアクションをかけるなりするのが吉です。
 
 初心者に限らず、PCの出番が極端に固まったり、偏るのは可能な限り避けるようにがんばってください。シナリオと持っている技能との相性によって活躍が偏ってしまうのは避けられませんが、行動の機会は全員が平等に持っています。しかし、慣れているプレイヤーがどんどん行動宣言をすることでやるべき調査を消化してしまい、そうでないプレイヤーが手持無沙汰になるという事態が時折発生します。それを避けるには、誰かが行動宣言をしたら「じゃあ○○さんがそれをやっている間に他の人はこういうことができるよ。△△さんはどうする?」とこまめに確認することで全員の行動をうながす、などの方法が有効です。
 
 別行動で片方のシーンが長引きそうな場合は、ある程度のところで切ってもう片方もやる、そちらがある程度進んだらまた戻る、といったようにシーンを往復してみたり、○○さんの場面がここまで進んだら△△さんもやるね、と手番でないプレイヤーにフォローを入れておいたりといった手段があります(自分の手番がいつ回ってくるかわからないと、PLは待つのが大変です)。
 
 PCの有効でない試みによってシーンが長引きそうな場合(情報や手段が揃っていないためまだ開けられない扉を開こうと延々とがんばるなど)は、その方向のアプローチではこれ以上事態は進まないでしょう、とKPがばっさり切ることも重要です。
 PL(PC)には今自分のとっている行動が有効かそうでないかなど分かりようがないためなんでも試してみようとしますが、自由にやらせてあげようとして何も止めないでいると全然場面が進まなくなります。PCがとにかく隅々まで情報収集をしようとする問題と同じく、これはKPの側で線を引かなくてはなりません。

 

自信をもってキーパリングしよう

 
 TRPGには昔から「黄金ルール」というものが存在します。実際、ゲームをマスタリングする役目の人物にどこまでの権限があるかはシステムによって微妙に違いがあるのですが、それでもセッションにおいて、KPの裁定は絶対です。黒い鴉もあなたが白と言えば白です。
 
 セッション中の裁定において、KPと同等以上の権力をもつものが存在してはなりません。横暴に思えるかもしれませんが、たとえばあちらの裁定も正しい、こちらの裁定も正しいとなると、PLはどちらを信じればよいのでしょうか?裁定を決める権利を持つものが複数存在すると、セッションが混乱し、進行が不可能になります。これはどのTRPGでも同じため、そのようなルールができたのです。シナリオに「目星を使って敵を見つけろ」と書いてある?あなたが「いや聞き耳でも見つかるやろ」と思えばそれでいいのです。PLからの創意的な提案も無理と思ったら無理でいいのです。KPが自信を失ってこの裁定にしようか、いやこっちのほうがいいだろうかとやりだすと、PLも何を基準に行動を決めればよいのか分からなくなります。セッションが始まったら悩んでいる暇はありません。シナリオにない裁定が必要になります。新しい武器のデータをその場で決めることもあります。なんならその場で新しいルールを作ってしまいます。人に意見を求めてもよいですが、どの裁定を使うかの決定権はあなたにしかありません。俺がルールだ!と自信をもって決めてしまいましょう。
 
 PLが「いや、こうしたら普通こうなるでしょ?」だとか、「~~については詳しいけどこうしたらこうなるよ」などとねじ込んでくる場合もありますが、そういう時は「ここは私の卓なので、私の常識を使います」と言いきって構いません(もちろん、その意見が参考になると思えば採用することもできます)。
 
 さて、ここまで読んで疑問を持った人も多いでしょう。「KPがそんなになんでもかんでも決めてしまっていいのか?」と。それを認めてしまうと、最終的に決まったルールのない無法地帯になってしまうのではないかと。
 その疑問は正しいです。↑の黄金ルールが悪い方向に働くと、「PCが行動するたびにKPの胸先三寸でルールが変わる。KPが気に入らない行動が何もできない。PCは何を基準に行動すればよいのかわからない」といった状況が起こります。
 
 そんな状況を防ぐために必要なのがルールなのです。先述した黄金ルールのことではありません。クトゥルフ神話TRPGのルールブックに掲載されているルールのことです。
 KPは「俺がルールだ」が基本ですが、その場合のルールとは、「どのルールを使うかを選び、あるいはアレンジして、最終的なルールを作ることができる」という意味でのルールです。まず大前提として、クトゥルフ神話TRPGのルールが存在し、そのルールをどう運用するかを決められる、ということなのです。
 
 KPも、基本の方向性としてはあくまで元々存在するルールに従い、必要があればそれに応じてルールを工夫する、という形をとることによって、KPの気まぐれなキーパリングでルールが滅茶苦茶になるかも、と心配するPLに一定の安心を提供するのです。元々のルールからあまり外れすぎると、PLは行動の基準を失い、混乱したり理不尽さを感じたりします。ルルブp.29なども合わせて参照のこと──『キーパーはプレイヤーの質問に答え、また考える材料を公平に提示しなければならない』。ゲームを遊ぶ上で使うルールが公開されていることは公平さの最低条件です。
 
 ルルブを読んだあなたならば分かると思いますが、KPはCoCのルールで定められていない部分について自由にルールを定めることができます。また、既存のルールを遊びやすいように任意で改変することもできます。
 そのような元々のルールに対する改変の権利もKPのできることに含まれますが、それはあくまで「ルールがないとPLはどう遊べばよいか分からなくなる/遊び辛いルールのままではPLが楽しめない」からそのような権利が与えられているのです。KPの仕事は「ルールをなくす」のではなく、「PLが楽しく遊べるように、ルルブを元にして最終的なルールの形を作る」ことなのです。
 クトゥルフ神話TRPGは特にKPの裁量が大きく、KPがなんでもできすぎる、と思うかもしれませんが、それは裏を返せばKP次第で柔軟にどんな遊び方もできるということです。こういう書き方をするとプレッシャーを感じるかもしれませんが、PLに楽しく遊んでもらうために、ルールをうまく工夫しようという気持ちでさえあれば大丈夫。ルールを守るのも、変えるのも、まずPLが楽しく遊べるかどうかだけを考えてください。裁定した結果、ルールが難しすぎることでPLのやる気をなくしてしまわないか?逆に簡単すぎて興を削いでしまわないか?どのような疑問も、その時一緒に遊ぶPLを見て考えましょう。
 
 KP強権はときにシナリオの秩序を維持するために不可欠です。KPが自信をもってルールを裁定することで、セッションが安定します。KPのやりたいシナリオの方向性、雰囲気をデザインし、参加者にわかりやすく説明し、その方向性を理解してくれるPLを集め、ダメなものにはダメといい、すべての人に公平になるようルールを運用しシナリオを統括するのがKPの仕事です。私はこういうセッションをします、という説明を丁寧にしておけば、それに乗ってくれるPLが集まります。
 もしあえて外れようとするPCが来てしまったら、自分がやりたいセッションはこれだ!という直感を信じて裁定してください。それがあなたのセッションを求めて集まってくれた他のPLたちのためにもなります。
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