一畳ちょっとの二人部屋

一畳ちょっとの二人部屋

創作や趣味のゲームの話

【クトゥルフ神話TRPG】「ルールブックに書かれてないルール」があることを知ってる?~あるいは楽しめない秘匿HOシナリオについて~

B!
LINE
f:id:entori:20190427045345p:plain
 
 秘匿HOシナリオを遊んだけど楽しくなかった!自分の感覚がおかしい?あるいは、秘匿HOシナリオを作ってみたい!でもCoCで秘匿は難しいっていうし、何に気をつけたらいいんだろう?というあなた向けに、CoC秘匿シナリオにおける失敗パターンのひとつをお話しする記事。
 
 秘匿HOシナリオは嫌、と言う人がいる。理由は様々だが、彼ら/彼女らに嫌、と言わしめるシナリオのうちいくつかには共通点がある。その共通点とは「ルールブックに書かれていないルール」に関係があるのだ。
 

 

前置き

 最初に断っておくが、本稿にはすでに行われた/これから行われる秘匿HOを用いたシナリオを断罪するような意図はない(私も遊んでいる)。楽しい秘匿HOシナリオもあるし、参加者が楽しめれば全てOKだ。
 だが世の中には楽しくないどころか今後秘匿HOはやりたくないとまで言わしめてしまうようなシナリオもあって、原因としてこういうものあるよ、という話をしたい。
 
 面白いやつは面白いんだよ。面白いやつは。
 
 

本文

 ゲームにはルールがある。
 ゲームは遊びなので、一番重要なのは参加者全員が楽しむことだ。
 そして、全員が楽しく遊ぶためにルールが必要とされる。
 
 で、秘匿HOというやつはこのルールを破ってしまうことがある。ルールが破られると不公平が発生する。不公平に遊ぶゲームは楽しくない。そこが問題だ。
 
 しかしながら、秘匿HOを使うシナリオであっても、普通は基本ルールブックのルールに準じてプレイされている。情報を秘匿するにあたってハウスルールが追加されていることがある程度で、元のルールを破りまくることを強いるようなシナリオは記憶にない人のほうが多いだろう。では、いったいどんなルールが破られているというのだろうか?
 

「ルールブックに書かれていない」ルール

 
 ゲームには、明文化されていないルールがある。それは文字に起こしてしまえばしごく当たり前に見える。いやもう本当に当たり前。分かっている人には当たり前すぎて怒られるかもしれない。
 だがこのルールは当たり前すぎるがゆえにいちいち書かれない。書かれないがために、意識されることもあまりない。当たり前ゆえ普通は無意識のうちに守られているが、逆に言うと無意識にしか守られていないため、ルールが破られていても気づかれないことがあるのだ。
 この明文化されない、いつもは皆が無意識に守っているルールのことを仮に「当たり前のルール」と呼ぼう。
 
 TRPGで元々のシステムから離れた変則的なシナリオを作ると、この「当たり前のルール」自体が知らないうちに崩れやすい。CoCは元のシステムが柔軟でシナリオに独自のルールを導入しやすいため、輪をかけて崩れやすくなっている。楽しくない秘匿HOシナリオには、「当たり前のルール」が破られてしまっているものが多いのだ。
 
 ではこの当たり前のルール」とはなんなのか、それを破らないようにするにはどうすれば良いのか、について考えたい。
 
 以下、カッコなしのルールという語は一般的な意味でのルール(個別のゲームのルール)を指す。このルールという言葉にはルールブックに書いてあるような内容全てが含まれる。行動の手順や規則のみならず、勝利条件なども重要なルールだ。
  このルールに対して、「当たり前のルール」とはどんなものなのかを以下に述べていく。
 
 

当たり前のルール」の例……例、と書いたのは全てを網羅できている自信がないからだ。他にもこういう「当たり前のルール」があるぞという方は各々発信してほしい。

 
ルールは必ず全員に対して適用される
(GMとそれ以外など、ゲーム中の役割によって適用されるルールが違うことはある。だが参加者全員になんらかのルールが課されるのは間違いない。ルールの課されていない状態はゲームではない)
 
ルールは全員に公開され、全員が同じだけの情報をもつ
(全ての人に公開されないルールがある、何らかの理由で人によって持っている情報量が変わる、というルールがない限り)
 
ルールが知らないうちに変わることはない
(知らないうちに変わることがある、というルールが事前に知らされていないかぎり)
 
・全員が自分(自陣営)の勝利を目指す
(負けそうだからといって途中でゲームを投げて適当な動きをしたり、他の人を勝たせようとしたりしない。負けを目指してもよい、という ルールがないかぎり)
 
 これはゲームの公平性、フェアネスのための不文律だ。というか、公平にゲームを遊ぼうと思ったら一部の人にだけルールを説明しないとか普通考えつかないと思う。すごろくで「最初にあがった人が勝ち」っていうルールを一人だけ知らされてないとかね。
「当たり前」と書いたわけが分かってもらえただろうか。
 
 CoCの勝利条件は全員が楽しむことだ。ルールブックにもそう書いてある。
 が、それはそれとしてシナリオごとに報酬の設定された大目的みたいなものはある。神話生物を封印するとかカルティストを倒すとか。普通はこれを共通の目的として目指すことになる。
 CoCは協力ゲーム*1だ。PC同士は対立してもPL同士は協力しよう、とルールブックにも書かれている。よって、PLはまずルールとして「PLどうしは協力するもの」と考える。このルールが崩れる場合は事前に「PvPあり」などと募集要項に記載されることが多い*2
 とくに注記がなければ、「PLは皆勝利条件を共有している」と思ってシナリオに参加するわけだ。
 
 しかしながら、秘匿HOシナリオには「全員が勝利条件を共有している、と一部の人に思い込ませておいて別の人には違う勝利条件を渡し、しかも片方はそのことを知っているのにもう片方は知らない」というようなことをするやつがある。「実は勝利条件の違う人間がいる」というルールを知らない人を作り、その人(たち)を負かしてから「サプライズ!実は勝利条件の違う人がいました!」とやるわけだ。だがこれは、上記「当たり前のルール」のうち
 
・ルールは全員に公開され、全員が同じだけの情報をもつ
 
を破っている。実は一部のPL&PCだけ使えるルールがあって、しかもそのことを他は知らない、という合わせ技も存在する。
 そりゃゲームの大前提を信じている人をだまして別のルールを用意すれば勝てるのは当たり前だ。サプライズはサプライズだが、嬉しくないサプライズだ。やられた側は単純に「ズルをされた」とか「八百長に巻き込まれた」と感じる。
 公平なゲームだと思って参加したのに実は知らされていたルールと違った、知らないうちにルールが変わっていて負けた、そんなの誰もやりたいと思わない。
 しかしながら、意外性や一部の人だけの楽しみだけに目を取られて行きすぎると、この当たり前が忘れられてしまうらしい。とくに、これはGMが気づきにくい罠のようだ。GM側からすればサプライズを仕掛けるのは楽しいことなので、そのアイデアに夢中になってしまうと歯止めがききにくい。自分も含めて、自省が必要なことだと思う。
 上記は極端な実例だが、秘匿ギミックはこれに近い「当たり前のルール」破りの危険と常に隣りあわせだ。
 
 
 CoCとは違い秘匿HOが最初からルールに組み込まれているようなシステムもあるが、その場合はきちんと秘匿HOによる情報の不均衡等々についてのルールが全員に公開されている。勝利条件が違ったり、変わったりといったルール変更についてのルールもPLは全員が事前に了承してから参加する*3成功する秘匿HOシナリオは、「当たり前のルール」は破らない
 
 シナリオ製作者やKPは楽しいゲームのためなら新しいルールを追加したり既存のルールを変更したりしてもよい。だが、「当たり前のルール」は崩さないのが賢明だ。これらはゲームの公平さを担保するためのもので、公平さはゲームを楽しむために絶対に必要だ*4
 
 自分の書いた秘匿HOシナリオが不公平なものになっていないか心配になったら、全員の勝利条件やルールに関して与えられている情報量は同じか、不均衡があるならば情報の不均衡があるということ自体についてなんらかの方法で周知されるか、またその不均衡な部分に干渉し是正する手段が(とくに情報量的に不利なPCに対して)保証されているかを気にするといいと思う。あなたは情報が少ないですよー、と知らされてもそれをどうにかする方法がなければ不公平によるフラストレーションを抱えるのは避けられない。情報と手段はワンセットにしておこう。
 
 個人的には情報秘匿によってエモいRPが発生しやすくなる、程度であれば安全に秘匿シナリオのよいところを楽しめると思うが、勝利条件(生還など)に影響する場合はかなりめんどうなことになるので、特殊ルールのデザインに自信がない場合は極力避け、自信があるとしても率直な意見がもらえるテストプレイ環境を用意して慎重に調整を重ねるべきだと思う。
 
 ちなみにPLは、一度まずい秘匿HOの卓を経験すると秘匿のひの字もないような他卓でもそのような騙し討ちをやられるんじゃないかと警戒してスムーズに協力できなくなってしまうことがあり、関係のない卓にまで被害が及ぶこと甚だしい。
 KPはPLが楽しめる、公平な卓を守る存在なんだということを忘れないようにしよう。
 
 

補:対戦ゲームにおける「当たり前のルール」

 全員が自分(自陣営)の勝利を目指す、負けそうだからといって途中でゲームを投げて適当な動きをしたり、他の人を勝たせようとしたりしない、という「当たり前のルール」がないと、対戦ゲームは成り立たない。
 
 例として人狼*5を挙げよう。村人は村人の、人狼人狼の勝利を目指しているという大前提があるからこそ推理が成立する。これが普通の村人だけど人狼の勝利を目指してもいいだとか、勝ちを目指さない適当な動きをしてもよいことになれば推理が一切成り立たなくなってしまう。
 セオリーを知らずに利他行為をしてしまう初心者やリアル狂人が嫌がられるのはこのゲーム自体の大前提を崩してしまうからだ。初心者は知識や経験の不足により、勝ちを目指さない(目指せない)行動をとってしまう。これにより推理が成り立たなくなり混乱が起こる。
 
 自分の知る限り全て*6の対戦ゲームはこの前提の上にルールが作られている。
 

リア狂についての補足

 真面目に利敵行為をやってしまう人、きちんと考えて真剣にやったはずが、全員が勝ちを目指さなくてはいけないという「当たり前のルール」に反する行動になってしまった人を指してリア狂と呼ぶことがある。
 
 動画なんかだとまた文脈が変わってくるが、リア狂ですねwwwといって面白がるのは、まじめにやったにも関わらず突飛な行動をしてしまった人をフォローし、笑いに変えるためのコメントだ。一生懸命やったつもりでも失敗してしまう、そんな時に過度に落ち込まないようにフォローする言葉なのだ。もちろん変な動きしやがってこいつ、という気持ちをこめて発言する人もいるだろうが、あくまで笑いのニュアンスとともに言われる場合はその場を和やかに流そうという配慮があると考えてよいのではないだろうか。
 
 というわけで、リア狂とは基本的に自称する言葉ではない(私初心者なんで……というのと同様のニュアンスで、私リア狂しちゃうんで……=セオリーに沿わない行動をしてしまったらごめんなさい、という場合はある)。普通に遊んでいる時に自分からこれを言って適当な行動で場をかき乱すのはアウトだ。ネタ卓なら適当で構わないこともあるが、意図的なリア狂は基本的に勝ちを目指さない=「当たり前のルール」を破る荒らし行為であるということを忘れてはいけない。
 
 

さらにおまけの補足

 上でも書いたようにCoCはそもそも協力ゲームとしてデザインされているものなので、そこに秘密や対立といった協力を反故にするような要素を持ち込むと遊び方が一気に変わってしまう。それをカバーしてスムーズに遊べるようにするにはかなり気を遣ったゲームデザインが必要で、ルールによるカバーがない場合KPの腕やPLによる向き不向きがかなりはっきり出てしまうのは仕方がない
 今回の本論には関係ないのでこの点詳しく論じることはしないが、秘匿が嫌がられる理由について語る記事で一切触れないのもちょっとどうかと思ったのでここに付記しておく。
 
 
 そしてここまで書いたところでルールブックにこんな文章があったのを思い出したので、引用して〆としよう。
 

ルールは遊びをゲームに変える。ルールによって、各プレイヤーを含むすべての登場人物は公平に取り扱われることになり、勝利のチャンスが平等に与えられることになるのである。』6版p.57

 

*1:ここでいう協力ゲームはゲーム理論の用語ではなくボードゲームの説明において使われる協力ゲーム。対義語は対戦ゲームとする

*2:無論茶番であったり、事前にそのつもりがなくても成り行き上発生してしまうPvPもあるが、そうでない場合は協力ゲームという基本のルールがひっくり返ってしまうことになるので、ある種のハウスルールとして事前に告知するほうが賢明

*3:ただインセイン等においてもシナリオタイプを誤認させたうえでの騙し討ちといった話を聞くことはあり、シナリオの作りやGM側の運用次第でトラブルは発生しうる

*4:もしかすると公平でないほうが楽しいという人がいるかもしれないが、そういう嗜好だとわかっている親友と遊ぶのでもない限りそんなプレイヤーの存在を考慮するのは賢明ではない、とか書くほうがいいのかもしれない

*5:参加者は村人陣営と人狼陣営とに別れて戦う。特殊な役職で陣営が増えることもあるが基本はこの二陣営の対戦

*6:本当に全てかと言われると難しいがとりあえずパッと思い浮かぶ反例がないのでこの注釈だけつけておく。テストプレイなんてしてないよ系のハチャメチャパーティーゲームであれば、勝ちを投げて適当にプレイしはじめるプレイヤーが発生するような事態は当然想定されていると思う。そういう事態"も"想定されており、そうなっても楽しいようにデザインされているというだけで、ルール自体は全員が自分の勝利を目指して行動するという前提の上に作られているはずだ