一畳ちょっとの二人部屋

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創作や趣味のゲームの話

【クトゥルフ神話TRPG】KP初心者のあなたがまずやるべきこと

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  KP初心者で何をすればいいのか、セッションの準備とは何ができていればいいのかがおぼつかないあなたのために、必要な事前準備を優先順位順にまとめていきます。上から順番に読み、それぞれの項目ができているかチェックしてみてください。
 慣れないうちは大変な部分もあるかもしれませんが、楽しいセッションのためにはそれだけやる価値があります。この記事をお供に、少しだけ頑張ってみてください。

ルールを読もう

 PL向けのページは全て読み込んでいることが大前提です。その上にキーパーが読んでおくべき章はどれか、はp.29*1にきちんと書かれています。とくにp.144~の「キーパーの知識」は学ぶべきところが多いので、じっくり読むことをおすすめします。
 すべてのルールの詳細を覚える必要はありませんが、せめてどこを見れば求めているルールが見つかるのかは把握しておきましょう。また、プレイ中必要な場面ですぐに調べられるようにしておきましょう。自分は技能の定義、戦闘、正気度喪失のガイドラインなど、とっさに参照することがある部分には付箋を貼っています(かなり便利です)。
 必要なルールがすぐに出てこないと、ただでさえ忙しいキーパリングがさらに大変になってしまいます。
 
 また、ルールは概要だけであってもたくさん覚えれば覚えるほど
・柔軟な処理のために使える武器が増え、PLの満足度が上がる
という効果と、
・システムの全体像を把握することで自信をもってスピーディーに裁定を下せるようになる
という効果があります。
 
 前者について。PLの提案というものは実に多彩で、ルールブックに例のない処理を次々に考える必要があります。そんな時に「それはできません」と断って済ますこともできますが*2、頭に入っているルールが多ければ多いほど「じゃあこういう処理でこのダイスに成功すればできることにしましょうか」だとか「その方法は難しそうですが、そういう意図であれば代わりにこんな方法で達成することもできそうです。どうしますか?」等PLのやりたいことに寄り添った提案ができる可能性が高くなります。
 頑張って考えたアイデアが報われるという手応えがあれば、自由に考え、解決策を自分なりに工夫できるというTRPGの醍醐味がより強く味わえます。PLに楽しんでもらいたいならば、頑張って損はないところです。
 
 後者について。ルールに自信がないと「いやもしかしたら使うルールはこれじゃなかったかも、もしかしたらもっと他に正しいやり方があるかも、不当な裁定をしてしまったら後で不満が出るかもしれないからちょっと考えよう、もしかしたら……」という迷いで考える時間が長くなります。
 ルールの全体像がきちんと頭に入っていれば「使えるルールの中ではこれが一番適当だな」と即座に決断できるため滞りなくセッションを進められますし、「ルールをきちんと理解している人がフェアにゲームを進めてくれているんだな」という安心感を与えられます。これもPLに楽しんでもらうためには大切なポイントですから、少しずつ取り組んでいきましょう。

間違った時の対応 

 さて、ルールをどれだけじっくり読んだとしても、セッション中必要なルールを忘れたり間違ってしまうことはよくあります。そんな時どうするべきか?
 重要なのは、間違わないことではなく間違いにどう対応するかです。処理間違いに気づいたりPLからの指摘があった場合はセッションを一旦止めて対応を検討します。
間違いや間違いに気付くタイミングは千差万別なので一概にこのような対応をすべきということはできません。大まかには
 
・そのセッション中は最初にやったのと同じ処理で通す
・過ぎた処理についてはそのまま流し、次回から正しい処理を行う
・過ぎた処理についてはそのまま流すが正しい処理を行った場合の結果に近くなるよう現在の状況に対して何らかの手を入れる。次回から正しい処理を行う
・処理を誤った時点まで巻き戻してやりなおす
 
 といったパターンがあります。基本的にはKPがごめんなさい案件なので、PL/PC有利の結果になるよう対応しましょう。せっかく成功していたダイスが巻き戻されて今度は失敗した、などということになるとPL感情は推して知るべし。
 セッションはKPとPLの対決ゲームではないのでPL有利にして悪いことはありません。
 

 

シナリオを読もう

 ルールが読めたら、次はシナリオを一言一句漏らさず読みましょう。セッション中にいちいちシナリオを確認するようでは、致命的にテンポが悪くなりPLも不安を覚えます。事件の背景、NPC側の動き、主要なイベントが起こる条件とその順序、それに対するPCの行動とそれによる分岐、情報が出る場所とその渡し方などを意識して頭に入れておきます。シナリオの全貌が頭に入っていれば、PCが思わぬ動きをしたときにもアドリブがききます。
 7版p.217なども参考にしてください。

事前の告知と確認をしよう

  日時、所要時間、探索者作成にあたってのレギュレーション、推奨技能、ハウスルール、使用ツールなど必要と思われる情報を参加者に告知します。
 
 またとくに7版(10章を参照してください)で記述が明確化されましたが、シナリオの導入に関する事前情報、雰囲気、参加者に求める態度(というかノリ)などを事前に詳しく説明しておくことも重要です。
 NG事項(いじめやDV描写、動物虐待、グロの許容程度など非常に多岐にわたります)の確認については、「これが大丈夫か確認したらネタバレになってしまう」という心配は捨ててください。トラウマや生理的嫌悪に関わるNG事項は事前に確認しておかないと最悪卓の続行が不可能になったり、そのセッションは完遂できてもPLさんがそのままTRPG自体を引退してしまうことすらあります。センシティブな内容をどこまで許容できるかは人によって様々です。クトゥルフをやるんだからこのくらいは平気だろう」で済ませないようにしましょう。
 
 また、基本ルールブックの範囲を外れる特殊なシステムがある場合は必ず事前に告知しておきましょう。

 秘匿、PvP、PCへの特殊設定の付与などはシークレットやサプライズで行うものではありません。これはまがりなりにも決まったルールのあるゲームですから、参加者はそのルールを使うという前提の元で参加を決めます。そこに始まってから「実はこんなルール(設定)もあります」とやってしまった場合、「サプライズ」と「騙された」は紙一重です。害のないものであればよいのですが、PL/PCにリスクのあるルール(設定)だった場合、上手くやれば害のないものであったとしてもPLに多大なストレスがかかる可能性のほうが高いと思ってください。
 
 ちなみにキャラクター設定を事前の予告なく付加する行為についてはたとえ無害な設定であっても嫌がられる可能性は大きいです。そういうことをされても全く気にしないPLであると事前に分かっていない限りはきちんと予告をしましょう。
 
 それと、KPが初心者である場合に重要なのは、参加者に自身が初心者であると伝えておくこと。PCは常にKPの予想の外を行きます。時に無茶振りをするPCもいます。セッションの円滑な進行に協力してくださいと素直にお願いしておくことで、PLもKPを気遣いながらプレイすることができます
 慣れない人間がKPをするのは申し訳ないと思いますか?そんなことはありません。KPは負担が重い分どうしてもPLより少なくなってしまいます。KPが特定の人間に集中しすぎた結果、その人が疲弊して誰も遊べなくなる、というのがTRPGのコミュニティで最もよくある問題のひとつです。KPをしてくれる人員が増えるのは、その場にいる誰にとっても嬉しいことです。誰しも最初は初めてです。恐れずチャレンジしてみてください。KPをやってみようと思ってくれて、ありがとう。
 

ハウスルールの整備と注意点

 CoCは元々のルールとは違うものが広く使われている場合がありますが、そのようなルールを何も考えずにただ取り入れるのは避けましょう(ましてや元のルールと違うことすら気付かずに使っているようでは話になりません)。
 
 元のルールだけでは対処しきれないことが予め分かっている場合や不都合がある時にだけ、元のルールとそのルールから変更した理由を説明の上で使ってください。また、ハウスルールの内容はわかりやすくまとめて、いつでも参照できるようにしておきましょう。相手(PL)も初心者の場合はなおさらです。
 クリティカル・ファンブルの数値にはなぜそのルールを採用するのですか?変えることによって生じうるデメリットにどのように対処しようと考えていますか?元々の成長ロールの設計思想はどのようなものだったと考えており、どのような理由からそれを変えようとしていますか?
 
 説明できないのであれば元々のルールを使った方が無難でしょう。元のルールのメリット、デメリットを理解していないのになぜハウスルールのほうがうまく機能すると思うのでしょうか?元々のルールの意図を理解せず、変更する必要性があるかどうかも分かっていないのにハウスルールを使ってもPLを混乱させるだけです。また、PLがそのハウスルールに不満を持った場合、元のルールからの変更意図を説明できないとまずいことになるのは明らかです。
 まずは元々のルールを正しく把握し回せるようになってから、運用上問題を感じた点を修正したり補う形でハウスルールを導入することをおすすめします。
 
 本当にあなたがやりたいことが、標準のルールを使ってもうまく扱うことができないのか?ハウス・ルールはゲームに十分役に立つのだろうか?7版p.202
 

キャラクターシートを確認し、シナリオを調整しよう

 参加者のキャラクターシートを事前に見ておきましょう。推奨技能を告知したにも関わらず、それを誰一人として持っていなかったりします。意図的にそうしているのであれば必要ないでしょうが、PL同士の話し合いが不十分で「誰かが持っていってくれるだろう」が重なった結果起こることもあります。そのような場合に再考を求めたり、あるいは自分の情報の出し方や誘導、PCが持っている技能の工夫で乗り切れそうか処理を検討してみたり、等等を考える時間が必要です。
 
 また、キャラクターの持っているフレーバー技能の使いどころをちょっと足してみたり、シナリオにある別の技能の代用として使ってもいいか聞かれた場合の裁定を考えたりもします。
 個人的には、重要な情報なのに一回技能に失敗したらもう手に入れるチャンスがない!どうしよう!という場合にPCの持っている別技能で情報を入手するルートを足しておいたりします(ないと本筋が進まないほどの重要情報であればダイスなしで手に入るように変更します)。PCはそう思った通りに行動してくれるわけではありません。また、シナリオ作者やKPによる「当然、賢い選択をするならこう動くだろう」という想定を超えた「賢い」行動、合理的な動き方を編み出すこともよくあります。
 PCが持っている技能、呪文(はバランスブレイカーな場合があるので難しいかもしれませんが)などは使える機会を増やしたほうが満足度が上がるため、事前に十分時間をかけて検討する価値はあるでしょう。
 
 さらに7版p.182, 183などを参考に、探索者をうまくシナリオに結びつけるためのアレンジを行います。シナリオのほうで元々「この犠牲者は探索者の友人である」などと設定されていることもありますが、舞台やその他シナリオの背景事情を可能な範囲で探索者に関係のあるものに変更することで事件に真剣に取り組みやすくなります。PLから探索者についての話を聞き、シナリオの導入を眺めながら一緒にアイデアを出し合いましょう。

持ち物に対するデータの設定

 例えば、「ヘアスプレー」と「マッチ」を持ったPCがいる場合、炎を使った判定の攻撃をどうするか。「(スマホなどの)モバイルバッテリー」も爆発すれば火種になります。「万年筆」も場合によっては攻撃の道具になるのではないでしょうか?「分厚い本」は装甲として使うことを要求されることもあります。そういった持ち物の使用方法を想定し、ダメージや使う技能を事前に設定しておきます。
 PCの目論見とKPの裁定がうまく合わなかった場合、シナリオ途中ですり合わせのため進行が止まったりもするので、予測できる範囲内では事前に通達しておくのがスムーズです。

芸術、製作などのオリジナル技能の適用範囲

 例えばですが、「芸術:錬金術」という技能があったとして、成功すれば鉛を本物の金に変えることができるでしょうか?
 残念ながらCoCの探索者は一般人ですので、リソースを払い魔術などを使わない限りは成立しない技能です。ただ、「化学的知識を用いてある金属を見た目上別のものに変えてしまうような化学マジックができる」という定義であれば採用することもできるかもしれません。このあたりはKPの裁定次第ですので採用してもしなくても構いません。
 
 超常的すぎて無理がある、もし使われても困ると思う場合は現実的な使いどころについてPLと話しあうか、今回のシナリオでは使えませんとお知らせしておきましょう。内容をオリジナルで設定できるということもあって、トンデモ設定が紛れ込みがちなので確認必須です。
 

プレイ環境の整備

 ルールやシナリオの確認が終わったら(あるいはその合間に)、いよいよ実際に遊ぶための環境を整備します。
 まずは遊ぶ上で必須のものから準備していきましょう。
 
 オフセッションの場合はマップや資料などのハンドアウト*3、必要に応じて自分用にまとめ直したシナリオを印刷し(あるいは参照しやすい形にまとめ)ておきます。
 オンラインセッションをする場合はツールに必要な画像をアップロードし、NPCコマの設定を行い、テキストを併用する場合コピペできる描写はすぐ出せるようまとめておくなどスムーズにセッションを進めるための仕込みを充実させましょう。
 
 コピペ用にまとめておくとよい文章……
 場面の描写
 新しい部屋など、場面が切り替わって新たな空間に入る際の描写です。ぱっと見て分かるものは最初に全部出しましょう。〈目星〉を使う必要があるものなど、動いて探さなければ分からないものや、近づいてよく見なければならないもの以外は、最初から、分かることを全てまとめて描写してください。「ここには何がありますか?」「○○です」「こっちは?」「○○です」といちいち問答すると情報の出し忘れにつながりますし、テンポも悪くなります。シナリオ側で分けて書かれていたとしてもまとめてしまってかまいません。
 同様に、物体や人物の描写も、良く調べる必要のある部分以外はまとめて一度に出せるようにしておきましょう。
 
 使う可能性の高いNPC発言
 PCから聞かれる可能性の高い情報については、細部の手直し程度で送れるように台詞の形でまとめておくと楽ができます。PCの発言をよく聞いて直さないと微妙にずれた返答になってしまうこともありますので、そこだけ気をつけましょう。
 
 
 画像を出す方法、NPCを切り替えて発言する方法などツールの使い方もあらかじめ確認しておきます(合わせてPLがツールの使い方を分かっているかどうかも確認しておきましょう)。
 最初は画像の出し方など必要最低限の機能さえおさえておけばOKです。シナリオ中、プレイヤーに必要な情報を提供するために使う機能=必要最低限の機能と考えましょう。ファンブル時のカットイン演出はなくても困りませんが、マップ画像が出てこないのは困ります。
 基本的なCoCのシナリオで遊ぶ場合、ココフォリアであれば、画像(マップなど)をパネルとして出す方法、ダイスの振り方(ダイスコマンド)、キャラクターコマの作り方が最低限理解しておくべき機能になります。またセッションをスムーズに進めるためにはチャットパレット、シーンの雰囲気をうまく伝えるために背景画像の変更が使えるようになるとよいでしょう。

部屋の装飾や演出の作り込み

 セッションに使う部屋の見た目を綺麗に整えたり、使う小道具、演出を充実させたりするのは基本最後にやることです。
 もちろんセッションにおいてプレイする場の雰囲気は非常に重要であり、装飾やBGMに凝ることは雰囲気作りの助けになりますが、それ以前にルールやシナリオ周りの基本的な準備ができていなければいくら雰囲気作りを頑張ったところで無駄になってしまいます。
 『キーパーはまず提示されたストーリーを完全に理解していなければならない。テーブルの上にどんなに素晴らしい物を並べても、悪いタイミングや、誤解されたイベントや、間違った性格付けなどを補うことはできない。』p.155

  しかしここまでの準備がひととおり済んだのであれば、ぞんぶんに部屋作りや演出の作りこみを楽しみましょう。6版p.165、7版p.181などに関連する記述があります。

 BGMに凝ってみてもよし、立ち絵や画像、フィギュアやそれらしいハンドアウトを充実させてみるもよし、いざという場面で華々しく提示するカットインを作ってみるもよし。必要なことは全て済ませてありますから、時間とやる気の続く限り作りこんで、好きなところでやめればよいのです。

 

 さて、これで事前準備は終わりました。準備を丁寧に頑張れば頑張るだけ、結果は楽しいセッションとなって返ってきます。

  KPは考えることが多いですが、最初の数回はシナリオをとりあえず最後まで回しきれるだけでも上出来です。何回かやってみて、「このあたりをもっと上手くできないかな?」と思った場合は、その部分からひとつひとつ別の方法、新しい方法を試してみればいいのです。

 

 あとは実際に遊ぶだけ。どうかセッションを楽しんでください!

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*1:6版

*2:もちろん本当に無茶な提案もありますし、自分のキーパリング能力では無理だと思ったら潔く却下するのが安全です

*3:ルールブックにもありますが(7版p.202など)CoCにおいて本来ハンドアウトとはセッション中に配布するプレイヤー資料のことです。こういった用語もきちんとおさえておきましょう